2011年8月17日水曜日

安曇野で、縁を巡る。




さて、少し間があきましたが、安曇野2日目のお話。

この日のメインイベントは18時からの森のおうち絵本美術館で行われる、いせひでこさんのトークショーと、チェロコンサート、そして、新作を含めた原画展でした。

それまでの時間、今回同行して下さった、濱さんのガイドで、安曇野の縁の地を案内して頂きました。

最初に訪れたのは、安曇野『有明』という地名のもとになった、古事記の神話にちなんだ場所です。
乳房川、という、粋な河川名の川沿いの土手を少し散歩しました。



この日は久々に、晴天、有明の夏!の小道を気持ち良く歩きました。
あまりに暑かったので、濱さんが葉っぱで日傘を作ってくれました。
そして、芸能の神様である、細女(うずめ)神社へ。
ここには、お百度参りならぬ、一千度参り石があります。ガッツですね。
そこから、いわさきちひろ美術館へ。
ちひろさんによく似た、数少ない油絵で描かれた少女画が印象的でした。

そして、碌山美術館へ。
萩原碌山は、安曇野出身の精力的に作品をつくられた作家で、『女』『デスペア』などの彫刻が有名な作家です。
相馬黒光(新宿中村屋初代、相馬愛蔵の妻)がパトロンであったことでもよく知られています。


丁度、その『女』が、東京の近代国立美術館から、お里帰りして、展示中であったために作品を間近に拝見することが出来ました。

彼は明治37年にパリへ訪れた際、ロダンの彫刻に衝撃を受け、今までの絵画から、彫刻へ移行されたそうです。
ロダンに憧れたであろう様子が、他の作品からも伝わってきました。

碌山美術館は壮大な敷地ではないのですが、とても素敵にまとまっていて、4軒の建物が、気持ちよく調和を持ち、庭園の中に佇んでいます。

その一軒は教会風になっていて、とても素敵でした。


ここからが、濱さんでなければ巡れなかったのですが、なんとこの後、碌山のパトロン、相馬黒光の、相馬家の本家へ伺いました。

ダメ元で突然お邪魔したのですが、そっと外から素敵な応接室をのぞいていたら、耳が遠くてチャイムが聞こえなかった、相馬安兵衛さんが戸を開けて下さいました。

相馬安兵衛さんは、新宿中村屋の創設者、愛蔵さんの甥に当たる方です。現在は16代目安兵衛とのこと。代々、お名前も次ぐのですね。

明治から続く、その素敵な応接室がこちら。

かつて天井から吊るされていたシャンデリアは、戦時中に鉄回収のために無くなったのだそうです。


そして、碌山が初期に影響された絵画がこれだそうです。
碌山に憧れた若い画家志望の方が、一時は日に3000人も、この絵画を見るために訪れたのだそうです。

今回はゆっくりとした時間にお邪魔したので、特別に屏風も見せて下さいました。
これはすごいです。
新宿中村屋のマークの原画です!

相馬家にちなんだ、『双馬』というタイトルで、野沢如洋作。
これはかなりのお宝だと思います。



馬を得意とし、水墨画を好んで描いた、野沢如洋が、相馬家にて、直接描かれて、20分くらいで仕上げた作品だそうです。『如洋作品全集』に掲載されているページを見せて下さいました。
そして、この屏風にちなんで、新宿中村屋のマークが!
中村屋は、当時売りに出ていたパン屋の屋号で、相馬愛蔵が買収した際に、屋号をそのまま残したそうで、中村屋となっていますが、現在の中村屋の創設者は相馬愛蔵氏な訳です。
だから、中村屋のマークには馬がいたんですね!



なんで私がこんなに嬉しかったかというと、安曇野へ行く直前に、
『新宿紀伊國屋ホールは、新宿中村屋も出資してるんだよ。』というお話を偶然聞いていたからなのです。

この日記をまじめに読んで下さっている方にはちょっと気づけるかもしれませんが、

相馬家を訪れた日が、父の劇団の紀伊國屋ホールの公演の千秋楽だったのです。

『紀伊國屋ホールには、出資されたのですか?』と、安兵衛さんに伺うと、明るい表情で、
『そうそう、あれは、仲間達と皆で出したんだよ』と教えてくださいました。

新宿のあの地域には、芸術を愛する方が集っていたのですね。
素敵だと思いました。

紀伊國屋の創設者、田辺茂一氏、と、相馬夫妻、その他たくさんの芸術・文化を愛する『新宿人』達が築いてくださった礎の上に、私たち名もなき役者達が活動を続けさせて頂いている。

新宿の見方も変わったし、改めて、芸術の世を切り開いて下さった沢山の方の御霊にも、感謝の気持ちが湧きました。

安兵衛さんとも記念撮影。

この部屋には、まだまだお宝だらけなのでしょうが、
また安兵衛さんに会いに行きたいなあ、と思いました。


おまけですが、昼に以前朗読会をさせて頂いた、おそば『ふじもり』へ予約無しに伺いました。夏休みの影響で、店は大賑わい!忙しそうなお二人を見て、嬉しくなりました。

『あいちゃん、これ流してるの。』と、汗だくの幸恵さんが天井を指差します。

そこから聞こえてきたのは、朗読会で一緒に演奏してくれた、柳平さんのピアノの音色!
『いろのみ』のCDでした。


嬉しいですね。
混んでる時に、こころにゆとりが持てるから、気に入ってずっと流して下さってるのだそうです。

柳平さんのピアノを聞きながら、景気良くにぎやかなふじもりで、美味しいお蕎麦を食べる。
とてつもない幸せでした。。。

メインの絵本美術館が充実した時間になったことは、いう間でもありませんが、ここから新しい試みをいま模索中なので、またそのことは改めて書きたいと思います。


本当に素敵な、夢のような二日間でした♪